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Downbeat Magazine Feb 2018


敦賀明子

伝統のその先へ

ハモンドB3オルガンに向かった敦賀明子。ゴスペル風の情熱やブルース調の威厳さが織り成し叩き出される重厚なビートに反し、彼女の姿は軽やかである。大阪出身のオルガニストである敦賀は、ハーレムのショーマンズで自分のバンドを率いているにしても、ルー・ドナルドソンの長年のレギュラー・メンバーとして演奏するにしても(この夏、チャーリー・パーカー・ジャズ・フェスティバルにおいて彼女のエネルギーが会場を虜にしたように)、2001年にニューヨークへ移住して以来、音楽シーンでの不動の地位を着実に築き上げてきている。8枚目のリーダー・アルバム、「ソー・キュート、ソー・バッド」では、ドラムのジェフ・ハミルトンとギターのグラハム・デクターとを従え、彼女の勢いは留まるところを知らない。

2007年から演奏を共にしているドナルドソンとのステージで、敦賀は、アーシーなファンク「アリゲイター・ブーガルー」から、チャーリー・パーカーのバップの神髄がちりばめられたアップテンポ・スウィング「ウィー」、そしてスローなブルース「ウィスキー・ドリンキン・ウーマン」へと、様々な曲調に応じた豊かな表現力を見せる。

「ショーマンズで演奏している私を観にやってきたルーに、うちのバンドでやらないかと誘われた時には、夢が叶った!と思いました。」と、回顧する彼女。ドナルドソンのバンドに加わってから、敦賀はカーネギー・ホールをはじめ、ビレッジ・バンガードやディジーズ等のニューヨークの有名ジャズ・クラブなど、大きなステージへと活躍の場を広げ、世界中をツアーで廻るようにもなる。

3歳の彼女のために両親が小さいオルガンを購入し、まもなく「シャドー・オブ・ユア・スマイル」、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」、「ブリーズ・アンド・アイ」などのスタンダードを習い始める。そして高校生の時にジミー・スミスの「ザ・キャット」に出会う。感銘を受けた彼女は、”ブラザー”・ジャック・マクダフ、チャールズ・アーランド、ジミー・マクグリフなどのアーシーなスタイルに魅了されるようになる。特に、ドクター・ロニー・スミスはのちに重要な恩師となる人物である。

「ドクター・ロニーに出会ったのは、まだニューヨークに移り住む前に訪れたビレッジ・バンガードでした。」と、敦賀。「その時、ロニーはルー・ドナルドソン・カルテットで演奏していました。セットが終わって、バンドのドラマーだった田井中福司さんがバンド・メンバーに私を紹介してくれて、ロニーがステージにある彼のオルガンでブルースを弾いてみないかって言ってくれたんです。それが私の初めてのビレッジ・バンガード演奏となりました。」

ニューヨークへ移住して数年後、敦賀はハーレムにあるスミスの自宅で彼からレッスンを受け始める。「ドクター・ロニーがどうやって弾いているかを見たり、時には一緒に練習しました。彼とのレッスンから、ブルースの真髄を含め、オルガンを弾く上でとても大事なことをたくさん学びました。彼はまた、『君自身を音楽で表現すること。ハッピーな時にはハッピーに、悲しい気分の時には悲しげに。』と、教えてくれました。私は彼との出会いから、人生を音楽に捧げることがいかに素晴らしいかということを学び、『音楽と共に生きる』ということを意識するようになりました。」

「スウィート・アンド・ファンキー」(2007)、「オリエンタル・エクスプレス」(2009)、「Sakura」(2012)などこれまでのアルバムの中で、敦賀は、スウィング、ブルースからファンキーな演奏に至るまで、また、バラードにおいても独自の表現力で、その実力を披露してきている。「ソー・キュート、ソー・バッド」では、「ザ・レディ・イズ・ア・トランプ」を手始めに、ベビー・フェイス・ウィレットの「フェイス・トゥ・フェイス」ではブーガルーのリズムに乗り、「ユー・ドント・ノウ・ワット・ラブ・イズ」ではハミルトンの12/8のグルーブで海面を滑るように走り、メローなスライド・ハンプトンの「フレーム・フォー・ザ・ブルース」から、敦賀流のボサノバ調「七夕」へと、ますますその才能を発揮。

アルバムのタイトルについて、これは彼女自身のことではなく、彼女の飼い猫、タイガーのことだと明かしている。「タイガーはとっても可愛くて、音楽が大好き。」と、敦賀は語る。「私が練習していると、タイガーはいつもレスリー・スピーカーの上に座って聴いてるんです。でも、イタズラ好きで、特に物を落とすのが大好きなのです。夫も私もこれまでにいくつもグラスを壊されたり、鉛筆とか化粧品とかなくなっちゃったり。だから、タイガーは悪い子ちゃんでもあるんです!」

Bill Milkowski.

翻訳 Mihoko Naito mihokon@nyc.rr.com

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